俺が買った夢の話

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 「……ダメだ!!!」 さっきまでの悠々とした態度はどこへやら。  突如として、ネズはエルシェットから離れると、どさりとソファに顔を突っ伏した。  「できるわけないだろ、人の嫁を寝取るなんて!!」  そう叫ぶなり、えーんえーんとネズは泣き出す。もう情緒がジェットコースターだ。あまりのネズの情緒不安定さがエルシェットは心配になってきた。  「ごめんよ、ごめんよ、エルちゃん!やっぱり俺にはムリだ、友達の女房に手を出すなんてヒドイこと俺にはできねぇ!!」  「お、落ち着いて、ネズ君。」  手を合わせて謝るネズの背中をさすりながらエルシェットは言う。  「そうだ、餡巻き!餡巻き食べましょう!」  そうだ、テーブルの上には忘れられた餡巻きがあるじゃないか―――。  「オイコラテメェええええええ!!!」  バーーーーーン!!  部屋の隅にあるクローゼットの扉がものすごい勢いで蹴破られのはエルシェットが餡巻きに手を伸ばした時だった。  怒号と共にそこから現れたのは―――。  「フランツ?!」  エルシェットとネズは同時に驚きの声を上げた。  クローゼットの中から出てきたのは漁に行っているはずのフランツだった。  フランツは額に青筋を立てて、ネズとエルシェットを睨みつけている。  「なんで、ここにいるの?」  エルシェットの問いかけには答えずに、フランツはネズにむんずと掴みかかった。  「おまえ、夢の中なんだから人の嫁くらい上手く寝取れよ!!!」  「ハァ?!」  ネズが素っ頓狂な声を上げる。  「ごめん、何、夢の中って何?」  「ちくしょう、こっちは18000グラン払ってんだ!寝取られる嫁くらい見せろよちくしょう!」  がくがくとネズを揺さぶりながら、フランツは絶叫する。  そう、ここは夢の中―――。  フランツがシャッテンに頼んで夢屋を介して買った「”エルシェットの例の夢”」の中なのだ―――。    
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