好きだ!

5/10
前へ
/145ページ
次へ
 帰って行くみんなを兄貴と見送って家に入る。 「お帰り!みんな帰ったの?もー制服くらい着替えてからバスケやり……って、もと!血が付いてるじゃない!早く脱いで!」  玄関に出て来た母さんは慌てて俺の学ランを引っ張った。  白シャツのボタンも外してシャツまで剥ぎ取られる。 「さっむっ!何すんだよ!」  靴を脱ぎながらブルッと震えると 「早く手洗ってうがいして、顔も洗いなさい!凄い顔してるわよ!寒いなら早くする!ほら!」  洗面所の方に背中を押されて俺はパタパタと走った。  鏡に写った顔を見てうへぇっと苦笑いをする。  鼻の周りが血だらけでめちゃくちゃ間抜け面をしていた。  手で押さえていたからまだマシだろうけど……情けね。  彩織さんの前であんなことになったのがちょっとショックだった。  ちっちゃくて(俺よりは大きいけど)優しくて、バスケも上手くて、美人……あんな完璧な人居るか?  いや、絶対居ない!  彩織さん……次はいつ会えるかな……。  彩織さんの笑顔を思い出してニヤける顔を鏡で見てしまって……俺は1人で恥ずかしくなる。  鏡に背を向けてため息を吐いて…… 「っくしょっ!」  まだ上をちゃんと着ていなかったことを思い出して、俺は両腕を擦りながら急いで階段を上った。
/145ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加