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せいぜい
処刑台の上で私はぐるっと辺りを見渡した。固唾を飲んで王女の処刑を見守る観衆はついさっきまで、新女王の誕生を祝っていたのだ。その落差が面白かった。
私は広場に面した王宮のバルコニーに目をやる。そこにはユイの小さな姿があった。王冠も王のローブも細いあの子には全然似合っていない。
「何か言い残す事は?」
死刑執行人が言う。私はバルコニーに向かって、声を張り上げた。
「ユイー! 地獄の底で待っているわ!! せいぜい無能を晒すのね!」
バルコニーの上のユイの表情は見れない。観衆が怒号をあげ、兵士達が鎮まらせようとしているのを横目に、死刑執行人が私をギロチンへとはめ込む。
首を固定させながら私は再びユイを見上げた。あの子もこちらを見ているのを確信して。
そうよ。
女にしか興味の無いお父様も、権力をおもちゃ程度にしか思っていないお兄様も、小手先の策略をこねくり回すだけしか能のない私も、これから難しい局面へと進んでいくこの国の舵を握るには相応しく無い。
そう、明確なビジョンを持つあなたでないとこの国の王は務まらない。
お膳立てはしてあげたわ。
<せいぜい、頑張るのよユイ>
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