プレゼントを受け取って

1/1
16人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ

プレゼントを受け取って

「アンお姉様がこれを私へ?」 「はい。我が主人からでございます。ユイ殿下、どうぞお受け取りください」  お姉様直属の侍女が頭を下げると同時に、私室の中がざわついた。  差し出された小箱はきれいに包装されていた。なんの害もないという様に。受け取ろうかどうしようか、私は中途半端に手を出したまま固まる。 「ユイ殿下、お受け取りになってはいけません! アン王女殿下が何をお考えか!」  私の後ろに侍っていた者たちから制止の声が掛かる。 「おほほほほ」  お姉様の侍女が嘲笑った。 「何がおかしいのじゃ!?」  私の乳母が詰め寄る。お姉様の侍女は笑みを深くする。 「さすが、妾腹の者達は考えが薄汚い」 「おのれ! 愚弄するか!?」 「我が主人が、ユイ殿下を害するとでも? わざわざ妾腹のユイ殿下を? この国の女性全ての頂点に立つ我が主人がわざわざ? たかだか国王陛下の温情で王女の地位に就いた妾腹のユイ殿下を?」 「ユイ殿下が王太子イグノ殿下と婚約した事を、アン殿下はご不快に思われているとのもっぱらの噂でしょう?」 「その様な下世話な噂」 「火のないところに煙は立たないといいますわ」 「そうですわ。いずれユイ殿下はこの国の未来の王妃! その事をアン殿下が」  私の侍女達が口々に言う。それに対してお姉様の侍女達は、嫌味たっぷりの視線を返すだけ。  これではいけない。 「お黙りなさい」  私は後ろを振り返った。侍女達がハッとした様に口を噤む。それを確かめて、再度お姉様からの使いの者達に向き直った。一つ息をして、覚悟を決める。  差し出された、小箱を手に取った。 「贈り物、確かにお受け取りしました。ありがとうございますと、アンお姉様にお伝えください」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!