外は五月

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外は五月

「あの子は確かに受け取ったのね?」 「はい、アン殿下。ユイは何も疑問に思っていない様でした」 「上手くいきましたわね。アン殿下」 「ユイが贈り物を使うもよし、捨ててしまうもよし」 「後は、ユイの周りに放った間者がなんと言ってくるか、それが楽しみですわね」  周囲の侍女達は勝手気ままに囀る。幼い頃から周りは私に媚びてくる者達だけだった。その事にももう慣れた。  侍女達が言うほど、ユイは愚かではない、あの小瓶の意味もちゃんと解釈できるだろう。  ユイが行動を起こすまで、私はせいぜいユイを嫌っている様に振る舞うのだ。まあ、実際嫌っているわけだけど。  この国、イクリーノ王国は今、次期王妃の地位をめぐって私、第一王女アンと第二王女ユイの二人が争っている、様だ。競争相手のユイが嫌い? そうではない、あの子に一目会った時から私はあの子を嫌いになった。理由なんかない、ただあの子の笑顔に腹が立っただけだ。  私の周りの者達はそんな私の考えを汲んで、ユイに散々嫌がらせをしてきた。  私の母は父王の第二妃だった。それに対してユイの母親はただの女官。権力の差は一目瞭然で、私達がした嫌がらせにユイが対抗できることなどなかった。  そこまで、思い出して私はふと不安になった。確かにユイは聡い。でも、その賢さが裏目に出る事はないだろうか? あの小瓶の意味を履き違えることが……?  釘を刺しておくべきね。  そう思ってから、ふと窓の外に目を移す。ガラスの向こうでは五月の透明な光の中で、バラが咲き乱れていた。
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