慈悲の手を

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慈悲の手を

「えっ…と、これが…こうで………そんでこう?」 カチャカチャ、とコントローラーを触る音が部屋に響き渡る。 「違う違う!そこの曲がり角右に行ったらポーションあるからそれ取ってから先進むの!」 俺、何気にこーゆー日常的な音好きなんだよなぁ そんなこと考えてたら隣から少し怒ったような口調で思考を遮られた 「……ぇ!ねぇ!聞いてる!?」 「ぅあ、ごめん、聞いてなかった…」 「……そこは聞いてなくても聞いてる、って言うとこなんじゃないの」 「ごめんごめん」 そう言いながら俺の顔はにへら、と笑う 愛想笑いだけは得意なんだよな 俺が笑うと、隣のこいつ…楓も笑う 腹から笑えていいな、お前。 ……改めて状況を説明しよう! 俺こと柊颯は双子の弟、柊楓と家でゲームをしている! ………だけ。 特に言うことなし。 あ、昨日綿棒買ったんだ、使い心地いいよ、これ 違うよな。絶対違うよな。 言うこと絶対違うよな 今俺は2年半かけてやってきたRPGの最終局面に立っている(俺が動かしてるゲームキャラが) ………なんて話してたら楓がボスキャラ倒したみたい。 俺と違ってPS(プレイヤースキル:そのままの意味である)の高い楓はすぐにボスキャラを倒す。 なんか手馴れた手つきっすね楓さん 過去に1回このゲームやり切ったことあります? ってくらい手馴れてる楓は俺に倒した喜びを分け与えずに、そして少し興奮気味に俺に何か伝えてくる。 「颯!見て!ボスキャラ倒したらお願いごと叶えてくれるってさ!」 …はぁ 中々見ない終わり方だな 「なんでもいいんじゃない?どうせもう終わったんだし」 「そっか…じゃあ俺一人で決めてい!?」 言わなくてもやるだろ、お前。 「ドーゾドーゾ」 「やったぁ〜どーしよっかな〜〜〜」 俺は特にやることもなく、3つあるベッドのうちの1つをなんともなしに見てみる。 …つい最近までいたんだよな、あいつ 「決めたよ!」 「何にしたの?」 「ゲームの世界に入りたい!!」 …はぁ? 「何言ってんの?」 「でも受理されたって画面に出てる」 まぁマジでそうなったら面白いかもな 「とりあえずもう夜遅いしセーブしてもう寝ようぜ」 「せやな!」 急な関西弁にびびる俺 ……を自分自身で実況する俺 よくわかんなくなって来たから寝よう にしても2年半かけてやったのにあんな最後なんて…ちょっと物足りないな 次の朝、恐竜の鳴き声のような声で目が覚めた俺は、全く知らない景色に囲まれて起きた
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