光と雪と火

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 窓に映る真っ白な吹雪こそ、現実(リアル)であった。  一方、デスク上でパソコンのディスプレイがランダムに映したのは、どこかの春だ。緑の平原と花畑、白い風車小屋、青い空。  世界にはこんな名所があるということだが、ここだってもう雪だらけだろう。緑は埋もれ、風車小屋は凍りつき、空は白灰色で。  僕はmisora.kunagiというユーザーネームとパスワードを入力し、パソコンのロックを解いた。春の風景が、アニメのキャラクターを背景にしたデスクトップ画面に切り替わる。  このパソコンは、僕の十三年の人生の中で、最も高価な玩具だ。こんな状況でも動いてくれていることに、無言で感謝している。  窓は凍りついて、もう開けない。どのみち吹雪はやまないので、開いても仕方がない。電気はまだ通っていて、キッチンの換気扇も機能しているからいい。この家で今、息をしている存在は僕だけだ。  豆電球だけ点けた僕の部屋、すなわち子供部屋には、たくさんの物が溜まっていた。事態が本格的に悪化する前に急いで買い込んだ非常食や防寒具、玩具に本。必要なものから不要そうなものまで、僕は両親から預かった大金で欲しいままに注文したのだ。  僕は趣味からくる毎朝の習慣として、ブックマークしている各通販サイトをチェックする。そのほとんどが今や、アクセスさえできなくなっている。運営元が機能あるいは存在していないのはわかっていることだが、この習慣をやめられない。サイトが機能しているところであっても、物流が死んでいて、注文した品が届かないなんてことも当たり前だった。  僕はパソコンをスリープモードにする。  今日はコンビニを見に行く日だ。防寒具をしっかり着込んで、カイロを懐に入れて、家を出た。
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