透明人間が見る空

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 帰り道、僕の心は深く沈んでいた。はぁ、と何度目かの溜息を吐いた後、何気なく夕焼けに染まる空を見上げると、ユキが鳥のように空を舞っていた。  あぁそうか……。  非日常にいる特別な存在が僕だけだ、なんて、勘違いもいいところだ。  家に着くと、庭先にいた母が、僕に「おかえり」と言った。  日常に戻ったことを知った僕は、透明人間や空を飛ぶ人間が存在することについて、という考えても答えが出ない不思議な悩みはとりあえず置いておくことにして、とにかくまず彼女に許してもらわなければ、と現実的な悩みで眠れない夜を過ごした。
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