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「時間がない。もう一つの理由を聞いてくれ。俺は誰かに託さないといけないものがある」
「託す?」
「あぁ、この銃を……君に託す」
男は持っていた歯車付きのスチームパンク銃を、少年に手渡した。
「……これ、を」
手のひらにずしりとした重みを感じるが、託された意味は分からない。
「いいか、よく聴いてくれ。今はファントムを制御しているが、長くは持たない」
男の中にある悪魔の人格。ファントムが出現するというのだ。だから──
「もしも、君が今後俺に会う事があれば、その時はファントムを殺してくれ」
この男に存在するもう一つの人格──ファントムの抹殺が少年に託された。
「なっ……!?」
少年は当然のことながら狼狽える。
「その時にはこの銃を使えるようになっているはずだ。いいか。この銃で、俺を撃つんだ」
「そんな……できないよ!そんなこと!」
「頼む!君の家族のような犠牲を出さない為なんだ」
──犠牲?これからも父のような仮面の化け物マスカが現れるとでもいうのだろうか。
男は真剣に説得する。とても嘘の様には見えない。
「……約束、してくれないか?」
懇願する様だった。もう、こうするしか手はない。という様な。
自分にしかできない事かもしれない。少年はゆっくりと首を縦に振った。
「……分かった」
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