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リュクレーヌがクレアの事は何も悪くないと言った。
そこのところは折り合いがつくのだろう。家族であろうと、他人。
クレアとアドミラの事は完全に分けて考えていたようだ。
尤も、自分の弟の事は自分で責任を取るなど言ってしまう男なのだが。
だが、クレアが責めていたのは、自分の存在というよりも、自分が父親を止められなかった事だった。
もっと話を聞いてあげられればよかった。
もっと、冷静でいられるようにすればよかった。
友人を傷つけるような事をする前に──
「ママなら……なんて言ったかしらね」
母親が生きていたなら、その様な父を見て何と言っただろうか。
どうして自分にはその言葉が出なかったのだろうか。
クレアは悔やむ事しか出来なかった。
そんな彼女を見て、フランは歯を食いしばった。悔やんだって仕方がない。過去はもうどうする事も出来ない。
それなら、とにかく今は──
「……僕たちのできる事をしよう」
「……懐かしいわね。その言葉」
フランの言葉に、少しだけクレアは微笑んだ。
「そうかな?」
「泣いている私にいつも言っていたわ」
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