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「……殺し、ちゃった」
ファントムを殺した。
即ち、ルーナエを殺してしまったという事ではないか。
あの空中へと昇った魂もルーナエのものではないか。
だとしたら、リュクレーヌに何と言おう。
こんなにもあっけなく弟が死んだなんて──
「でも、おかしいわよ……」
「……え?」
「ファントムは人間の体を借りているんでしょう?けど、この人はマスカみたいに壊れちゃったわ」
クレアの言うとおりだった。
ファントムはルーナエの躰に憑依している。
つまり、刺されて死ぬのならば、血を流し、死体が残るはずだ。
そして、壊れ去った亡骸はマスカが破壊された時のそれと同じ、これが意味する事は──
「こいつはファントムじゃなくて、ただのマスカ?」
マスカがファントムに化けただけの偽物だという事だ。
フラン達が指摘した内容に、アマラ軍はざわつく。
「影武者を使ったのか!」
「偽物のファントムだと!」
「だとしたら!本物は何処にいる!」
偽物のファントムによってアマラ軍は大混乱。
それもそのはず、アマラ軍は皆護衛任務をしている。
そんな中本物のファントムが別の場所を襲ったら?
半ばパニック状態の軍をよそに、フランは一人冷静だった。
「それは──」
言いかけた、その時、東の方角から鐘が鳴った。
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