7.バックムーン

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◆   夜の礼拝堂に一人の女性が居た。 礼拝堂という場所にふさわしく、ずっと何かを祈るように手を組み、瞳を閉じていた。 銀色のロングヘアが月に照らされる。 そこへ、一つの影が伸びる。汗ばむ季節だというのに黒いコートを着て、更には耳当てらしきものを付けている仮面の男──ファントムだ。 「こんにちは」 今宵は満月。 契約者の元へ降り立ち、契約を持ち掛ける。 通例の行事だった。 「あぁ、こんばんは。だったかな?」 ファントムは丁寧に言い直す。そして、女性の元へ、一足、また一足と近づいた。 「貴女、他の誰かになりたいんですよね?それなら……」 歩きながら営業トーク。 コートの懐からわざとらしく仮面を取り出し、彼女へと見せつける。 「契約を──」 交わしましょう──と続けようとした時だった。 礼拝堂の遥か天井にある鐘が、カーンカーンと音を立てる。 「何だ……?」 ファントムは天を仰いで鐘の音を気にした。 だが、大した問題ではないとすぐに、彼女の方へと向き直した。 だが、彼女の前に、音速で降り立った男が居た。 紺色のスリーピースのスーツを着こなし、不敵に笑う男──リュクレーヌだ。
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