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「何でそれを知っている?」
しかし、なぜ、ファントムがそれを知っているのだろうか?わざとらしく狼狽えて見せると、リュクレーヌはすぐさまニヤリと口角を上げた。
「……とでも言うと思ったか?」
「何?」
リュクレーヌはポケットから手のひらサイズの黒い虫のようなロボットを取り出してファントムに見せつけた。
その虫はまるで、あの天敵ともいえる黒光りの害虫を模したものだった。
例のロボットをリュクレーヌは口元に近づけ、深く息を吸う。
そして
「わっ!」
「!?」
割れんばかりの大声を出すと、ファントムは顔を顰め、耳当てを抑えた。
「お前が、これを使って事務所を盗聴していたのは知っていたよ。普段つけていない耳当てみたいなやつも、盗聴器からの音を聴くもんだろ?」
事務所に出た害虫の正体はファントムお手製の盗聴器。
リュクレーヌの大嫌いな見た目にしておけば、まじまじと調べられる事も無いだろう、と考えて作られたものだ。
だが毎日暇つぶしも兼ね隅々まで掃除された事務所内に害虫が出る物だろうか。という疑問。
そして、不自然な斑点がリュクレーヌに疑いを抱かせた。
以前虫の形をしたポストが飛んで行ったのも、ファントムの入れ知恵だとしたら、答えにたどり着くのはそう、難儀では無かった。
「へぇ。気づいていたんだ……それで、また助手くんを騙して喧嘩して一人で僕の元に向かったって訳?」
「……」
「助手君もかわいそうだよね。君の嘘にいっつも振り回されて。流石に今回は愛想が尽きたんじゃないの?」
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