7.バックムーン

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喧嘩になる事も、お互いに織り込み済みだ。 勿論、アドミラの元へ送られたファントムが偽物だった今、リュクレーヌが礼拝堂でファントムと戦っている事も。 「流石。なかなか、やるじゃん……でも」 「っ……!?」 ファントムは開き直り、ナイフでリュクレーヌを切りつける。 刃は肩の部分を掠った。 「僕の事を殺すことは出来ないでしょ?」 ナイフをもう一度構える。次は頭、心臓……致命傷を負わせてやるというように、ファントムは全速力で距離を詰める。 相手は不死身の化け物。 殺すことが出来ないのは分かってはいたが、戦闘不能状態に持ち込めばいいだろうと、ファントムは容赦なくリュクレーヌに襲い掛かる。 「ルーナエの躰がこんなに利用価値あるなんてね。不死身の君が殺せない人間だなんて」 リュクレーヌは逃げる事しか出来ない。 襲い掛かるナイフは何とかかわして、怪我をしても軽傷で済むようにしていた。 防戦一方。 そんな戦い方しかしない。いや、できなかった。 「ほらほら、さっきから守ってばっかりじゃん!攻撃しなよ!出来る物ならね!」 相手がルーナエだから。心はファントムに支配されていても、この躰はルーナエの物で、何よりも、ルーナエの魂が人質に捕られているのだ。 「どうせ殺せないでしょ! 」 「あぁ……俺はお前を殺せない」 「はははっ!やっぱりね!」 降参ともいえる発言を、ファントムは心底嬉しそうに嘲笑う。 だが、リュクレーヌもひとつ、ふっ、とわざとらしく微笑んだ。
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