7.バックムーン

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「くそ!何を……した! 」 ファントムはブラーチの方を睨みながら訊く。 「魔酔注射だ。強度の封印魔術がかかっている。躰は死なないが、時期、意識は途切れ、眠りにつくはずだ」 ブラーチは淡々と答えた。 「俺たちの任務はお前の生け捕りだからな」 リュクレーヌはしゃがみ込み、ファントムの顔を覗き込む。 「というわけで、おねんねしな。ファントム」 「そっかぁ……悔しい、なぁ」 白旗をあげる様に、ファントムの表情は緩んだ。 だが、次にはすぐさま不気味に笑い、こう言い放った。 「でもいいや。種は十分撒いたし」 意味深な言葉に、リュクレーヌが食い下がる。 「何だと?それ、どういう事だ!」 答えは返ってこなかった。 既にファントムは魔術による深い眠りについてしまったから。 「っ……」 肝心な事を聞き逃してしまっていたかもしれない。 ただそれだけが心残りではあったが、無事、ファントムを捕獲するという指令は完了した。  
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