7.バックムーン

54/62
前へ
/743ページ
次へ
◆   リュクレーヌは暫くの眠りについたファントムを背負う。 ルーナエの姿をしているだけに、弟を背中におぶった感覚に一瞬陥る。 文字通り、弟の業をリュクレーヌが背負うような、感覚。 「……なぁ、ブラーチ。」 「何だ」 「こいつ、これからどうなるんだろうな」 「お前と同じように幽閉されるだろうな」 ファントムは、これからアマラ軍に引き渡される。 そのまま軍の施設に幽閉されるだろう。 そう、リュクレーヌがされていたように。 「……ルーナエも、俺と同じような目に遭うのかな」 リュクレーヌは心配だった。 いくら彼がファントムとは言え、躰は弟のルーナエだ。 ルーナエの身に危険が及ぶような事にならないだろうか。 幽閉された、黒幕という事になれば、彼を拷問にかけたりする人間も居るのではないかと思ったのだ。 「……」 ブラーチは何も答えることが出来なかった。 そんな事ない、とは言えなかった。 「リュクレーヌ!」 俯いたまま、どこか暗い礼拝堂に、強く呼びかける声が響いた。 アマラの軍服を着た少年。 フランだ。後ろからはクレア、そしてラルファも居た。 「フラン!クレアにラルファさんも!」 「やっぱり、そっちに本物が行っていたんだね」 「あぁ、本物が現れたら鐘を鳴らすっていう約束だったからな」 フランが家を出る前に、おもむろに見た日誌の内容。 そこには、本物のファントムがリュクレーヌとブラーチの居た礼拝堂に来た時は、鐘を鳴らして知らせる。 そして、ファントムの引き渡しをするために、鐘の鳴る方へと来てくれ。という旨の書置きがしてあった。 飛んで火にいる夏の虫。 まんまとおびき寄せられたファントムは眠りにつき、アマラ軍へと引き渡されるのであった。
/743ページ

最初のコメントを投稿しよう!

106人が本棚に入れています
本棚に追加