7.バックムーン

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また一つ、礼拝堂に長い影が伸びる。 「無事、ファントムは確保したようだな」 状況を確かめる様に低い声が響いた。 「あ……」 フランが思わず声を漏らす。アドミラだった。 リュクレーヌは、ファントムを背負ったまま一歩前へ出て、アドミラの前へと立ちはだかる。 「あぁ、俺にかかればこんなの赤子の手をひねるより簡単だね」 「御託は結構。ブラーチ。この魔術はいつまで有効だ?」 「強力な術ですから、いくらファントムとは言え、今夜中は大丈夫でしょう」 ブラーチは淡々と説明する。 「目を覚ましても動かないように、今夜中に拘束しなければな」 「ちゃんと拘束しとけよ。俺の時みたいなザル警備したらコイツ、逃げるぜ」 リュクレーヌは、ファントムの方を一瞥して、アドミラに忠告した。 先月リュクレーヌが居た牢のように、弱い魔術をかけても意味がない。相手はファントムなのだから。というように。 「分かっている。さぁ、ファントムを引き渡してもらおうか」 アドミラは右手を前に出し、対象の引き渡しを求めた。 だが、 「待って」 凛とした、少女の声が彼らの取引を制止した。
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