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「さっそくやろうぜ!やっぱり最初はルーレットだな!」
リュクレーヌはせかせかと向かう。
──そういえば、自分は未成年なのに誰かに止められることも無くこのフロアに立ち入る事が出来たな。
フランは違和感を覚えた。いつもならお約束の子供扱いもここでは誰からも受ける事が無かった。
「フラン、早く―!」
「ごめん、ごめん。今行くよ」
だが、考える隙を与える事もなくリュクレーヌはフランを呼んだ。
リュクレーヌはチップをたんまり持ってルーレットのコーナーに居た。
これからゲームを始めるようだ。
持って来たペンキで塗られた木製のチップを一山、緑のボードのBLACKと書かれたゾーンにスライドさせて置いた。
「黒で!」
大きな声で自信満々に叫ぶ。
少し傷が入って古いルーレットが回り出し、白い球が転がる。
コロン、と音を立てて、球は、赤の13のゾーンに入った。
「赤で」
次こそは、とまた一山のチップをかける。
しかし、今度は黒のゾーンに白い球は収まった。
「うぅ……黒」
三度目の正直ともう一山のチップをかけた。
チップはもう二山分しかない。
計画性がないなぁとフランは半ば呆れていた。
そして、案の定白い球は赤のゾーンに入ってしまった。
ディーラーはニヤニヤとしたり顔だった。
対照的にリュクレーヌは普段見せないような随分と悔しそうな表情をしていた。
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