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「あぁ、もう!残り全部赤で!」
「えぇっ!リュクレーヌ!やけにならないで!」
負けすぎて遂に、やけを起こしたのかリュクレーヌは残りのチップを全て赤のゾーンに賭けた。
「勝算はあるの?」
「そんなもんない。だから……」
リュクレーヌはディーラーに聞かれないようにこっそりと耳打ちをする。
ルーレットが回る。
何週もした白い球は、最後にやはり黒のゾーンに収まろうとしていた。
その時だった。
「あっ!」
フランが大声と共に天井を指さす。
それにつられてディーラーはフランの指先の方を見た。
すると、リュクレーヌはルーレットの白い球に顔を近づけてふぅっとろうそくを消す様に息を吐きかけた。
黒に収まろうとしていた球は、隣の赤のゾーンに見事、移ったのだ。
「よっし!これで最初の分は取り返したな!」
リュクレーヌは嬉しそうに賭けていた倍の枚数あるチップを抱えてルーレットを離れた。
「これってイカサマ……」
「いいの!勝てば!」
「そんな、ズルはだめだよ」
「向こうが先にズルしてきたんだぜ?」
「え?」
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