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「なるほどね……でも、なんだか最初から僕を誘うつもりだったみたいな……」
リュクレーヌはベッドの上で一瞬だけぎくり、と動きを止めた。
「それに、やっぱり少し変だよ。インチキカジノにナイフの無いレストラン……豪華客船なのに」
「でも、客は一流の有名人も居たぞ?」
「えっ?だれだれ?」
「資産家のアルティム・マグネティカとグロリア・カルティス……あと、ディニー・アンキューラも居たな。さっき俺達がレストラン行った時に一瞬見かけた」
「知らない……ん?いや、待って。知っている……かも」
リュクレーヌの口から出た名前にフランは心当たりがあった。
「知っているはずさ。なんせ、つい先日の新聞に載っていた人物なんだからな」
「あっ!思い出した!沈没事故を起こした会社のお偉いさんだ!」
「そういう事。奴らのおかげで、俺達は四番目に良い、この部屋なんだよ」
「なるほどね……って、沈没事故直後なのに何しに来たんだよ?」
「さぁな。身をもって視察か、はたまた高飛びか……まぁ、俺達には関係ない話だ」
「そう……」
自社の船による痛ましい事故後だというのに、船旅を楽しむ無神経さにフランは顔を顰めた。
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