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「あ、あぁぁ……船長……どうして!」
「!?」
そこには、左胸と口から血を流して椅子に座りこんでいる中年の男と、その男を見ながら涙を流していた青年が居た。
死体と発見者の構図だ。
「フラン、お前はあまり見ない方がいい」
「う、うん……」
死体が苦手なフランには見せられないな、とリュクレーヌは警告する。
その時、どたどたといくつもの足音が部屋へと近づいた。
「船長……」
「きゃーー!船長!どうして!」
「船長!?」
死体を見るなり、驚愕し、叫び、船長という単語を並べる者たちが3人居た。
皆、服装からしてこの船のスタッフと見られた。
彼らは悲しみと驚きから死体に近づく。
しかし、証拠を消されるような事があってはならない。リュクレーヌは制止した。
「皆さん、落ち着いて!死体には触らないで」
「貴方は、一体……」
「あぁ、ご紹介が遅れました。名探偵のリュクレーヌ・モントディルーナです。こっちは助手のフラン」
船のクルーしか居ないこの室内に、自分だけが顔見知りではない事に気づき、リュクレーヌは自己紹介をした。
いつものように、名探偵を自称して。
「名探偵だって……?」
「インチキじゃない?」
「大体、あんなシャツ着た名探偵なんているの?」
「それに助手って言ったって、子供じゃないか」
やはりというべきか、向けられたのは相変わらず冷たい怪訝な視線。
この度はいつものインバネスコートではなくアロハシャツを着用しているからか、探偵と言ってもそう簡単に信じてもらえない。
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