8.スタージェンムーン

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「あ、あぁぁ……船長……どうして!」 「!?」 そこには、左胸と口から血を流して椅子に座りこんでいる中年の男と、その男を見ながら涙を流していた青年が居た。 死体と発見者の構図だ。 「フラン、お前はあまり見ない方がいい」 「う、うん……」 死体が苦手なフランには見せられないな、とリュクレーヌは警告する。 その時、どたどたといくつもの足音が部屋へと近づいた。 「船長……」 「きゃーー!船長!どうして!」 「船長!?」 死体を見るなり、驚愕し、叫び、船長という単語を並べる者たちが3人居た。 皆、服装からしてこの船のスタッフと見られた。 彼らは悲しみと驚きから死体に近づく。 しかし、証拠を消されるような事があってはならない。リュクレーヌは制止した。 「皆さん、落ち着いて!死体には触らないで」 「貴方は、一体……」 「あぁ、ご紹介が遅れました。名探偵のリュクレーヌ・モントディルーナです。こっちは助手のフラン」 船のクルーしか居ないこの室内に、自分だけが顔見知りではない事に気づき、リュクレーヌは自己紹介をした。 いつものように、名探偵を自称して。 「名探偵だって……?」 「インチキじゃない?」 「大体、あんなシャツ着た名探偵なんているの?」 「それに助手って言ったって、子供じゃないか」 やはりというべきか、向けられたのは相変わらず冷たい怪訝な視線。 この度はいつものインバネスコートではなくアロハシャツを着用しているからか、探偵と言ってもそう簡単に信じてもらえない。
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