8.スタージェンムーン

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確かに、いかにもバカンスを満喫しているといった格好の若い男が「僕は名探偵です」と言ったところで、説得力はないだろう。 スタッフの半分当たり前とも言える態度にフランも、ため息をついて、リュクレーヌに耳打ちをした。 「リュクレーヌ……好き放題言われているよ?」 「名刺とか作ったほうがいいかもな……」 リュクレーヌもやれやれといった様子で軽口を叩く。 すると、発見者の青年がリュクレーヌの方に声をかける。 「それで、探偵さん。船長を殺したのは誰なんですか!」 「焦らないで……死因は見たところ、左胸をナイフで刺されて死亡……」 死体に触らないように、顔を寄せてよく観察する。 胸に刺さって輝くナイフは、見覚えがあるものだった。 リュクレーヌは思わず「あっ!」と声を漏らす。 「料理用のナイフだ!」 「リュクレーヌのナイフが足りなかったのは……もしかして!」 その時、フランの言葉に耳を傾けた女性が振り返る。 一つに結ばれた短めの茶色いポニーテールが揺れ、疑問を抱いた表情が向いた。 「えっ?ナイフが足りなかった?」 「えぇ、僕のナイフだけ、一本足りなかったんです。えぇと……貴方は?」 「メシス・サティアー。レストランのスタッフです。ナイフが足りなかったというのはおかしいです!私、ちゃんと確認しました!」
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