8.スタージェンムーン

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ポールはリュクレーヌ達が蹴破ったドアとは反対側の壁を指さす。すると、窓のついていない小さなドアがひっそりとあった。 ドアノブには内側からかけられる鍵がついていた。ポールはこのドアから部屋へと入った。 「なるほど。じゃあ、スタッフ用のドアの鍵は開いていたんですか?」 「それが……開いていなくて。内側から開けてもらおうと、船長に声をかけたのですが、返事が無くて、おかしいぞ!と思って一度マスターキーを取りに行きました」 「それを証明する人はいますか?」 「私、彼と途中ですれ違いましたよ」 そう言って、暗い紫色の髪の毛と、赤い釣り目の女性が微笑んだ。 黒を基調としたカマ―ベストとミニスカートが彼女のメリハリのあるプロポーションを強調する。 「貴方は?ん?いや、見た事ありますね。貴方は」 「ディラ・リベラ。カジノのディーラーをしています。先ほどはどうも」 カジノのディーラー。 先ほどリュクレーヌ達が遊んだ場所のディーラーだった。 そういう訳で、彼女の顔には見覚えがあったのだ。 思い出したようにリュクレーヌは手を叩く。 「あぁ!そうだ。それで、貴方はポールさんとすれ違った……」 「えぇ。ちょうど休憩中だったの。ずいぶん急いでいたようだから『どうしたの?』って聞いたら『マスターキーを取りに行っていた』って……」 彼女はポールがマスターキーをもって、この現場へと向かうところを見たのだという。 立派な商人だ。
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