106人が本棚に入れています
本棚に追加
ポールはリュクレーヌ達が蹴破ったドアとは反対側の壁を指さす。すると、窓のついていない小さなドアがひっそりとあった。
ドアノブには内側からかけられる鍵がついていた。ポールはこのドアから部屋へと入った。
「なるほど。じゃあ、スタッフ用のドアの鍵は開いていたんですか?」
「それが……開いていなくて。内側から開けてもらおうと、船長に声をかけたのですが、返事が無くて、おかしいぞ!と思って一度マスターキーを取りに行きました」
「それを証明する人はいますか?」
「私、彼と途中ですれ違いましたよ」
そう言って、暗い紫色の髪の毛と、赤い釣り目の女性が微笑んだ。
黒を基調としたカマ―ベストとミニスカートが彼女のメリハリのあるプロポーションを強調する。
「貴方は?ん?いや、見た事ありますね。貴方は」
「ディラ・リベラ。カジノのディーラーをしています。先ほどはどうも」
カジノのディーラー。
先ほどリュクレーヌ達が遊んだ場所のディーラーだった。
そういう訳で、彼女の顔には見覚えがあったのだ。
思い出したようにリュクレーヌは手を叩く。
「あぁ!そうだ。それで、貴方はポールさんとすれ違った……」
「えぇ。ちょうど休憩中だったの。ずいぶん急いでいたようだから『どうしたの?』って聞いたら『マスターキーを取りに行っていた』って……」
彼女はポールがマスターキーをもって、この現場へと向かうところを見たのだという。
立派な商人だ。
最初のコメントを投稿しよう!