8.スタージェンムーン

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「ひっ……!」 レストランに足を踏み込むや否や、フランは、短く悲鳴を漏らした。 昨日リュクレーヌと食事をとった、オーシャンビューの特等席のテーブル上に、メシスの上半身のみの死体が立てておいてあったからだ。 腰の辺りを真っすぐ切られた切断面からは血が溢れ、白いテーブルクロスを深紅に染めていた。 辺りを見回しても、下半身は見当たらない。 「メシスちゃん……誰が、こんな……ひどい……」 テーブルの前で、絶望しきったように涙を流していたのはディラだった。 「これは……酷いな」 凄惨な有様に、フランは勿論のこと、リュクレーヌも顔を顰める。 「あぁ……メシス……どうして!」 ポールも仲間の死を目の当たりにして、シープと共に涙を流した。 その時、キッチンに備え付けられていた電話が無機質に鳴る。 悲しみに打ちひしがれているスタッフをよそに、リュクレーヌが電話に出た。 「もしもし!」 「大変だ!」 電話を掛けたのは声からシープだと分かった。 「何がありました?」 「一三二号室でお客様が死んでいるんです!」 「何だと!」 「すぐに行かなくちゃ!」 電話の内容は新たな死体が発見されたという事。 一三二号室というと、リュクレーヌとフランが泊まる客室のすぐ隣だ。 二人は一三二号室の方へと向かう。
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