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「ひっ……!」
レストランに足を踏み込むや否や、フランは、短く悲鳴を漏らした。
昨日リュクレーヌと食事をとった、オーシャンビューの特等席のテーブル上に、メシスの上半身のみの死体が立てておいてあったからだ。
腰の辺りを真っすぐ切られた切断面からは血が溢れ、白いテーブルクロスを深紅に染めていた。
辺りを見回しても、下半身は見当たらない。
「メシスちゃん……誰が、こんな……ひどい……」
テーブルの前で、絶望しきったように涙を流していたのはディラだった。
「これは……酷いな」
凄惨な有様に、フランは勿論のこと、リュクレーヌも顔を顰める。
「あぁ……メシス……どうして!」
ポールも仲間の死を目の当たりにして、シープと共に涙を流した。
その時、キッチンに備え付けられていた電話が無機質に鳴る。
悲しみに打ちひしがれているスタッフをよそに、リュクレーヌが電話に出た。
「もしもし!」
「大変だ!」
電話を掛けたのは声からシープだと分かった。
「何がありました?」
「一三二号室でお客様が死んでいるんです!」
「何だと!」
「すぐに行かなくちゃ!」
電話の内容は新たな死体が発見されたという事。
一三二号室というと、リュクレーヌとフランが泊まる客室のすぐ隣だ。
二人は一三二号室の方へと向かう。
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