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「第一発見者は、シープさん。貴方ですか?」
「あっ、そうですね。正確には、僕と……こちらのお客様もです」
シープはもう一人の男の方へ視線を送る。
「貴方は?」
「アルティム・マグネティカ一三三号室の客だ」
「なるほど。死体を発見する前後の事をお聞かせ下さい」
「一三二号室のグロリアとは知り合いで、一緒にデッキでも行こうと誘ったのだ」
「お二人でデッキへ?」
「あぁ、私は昨日まで船酔いが酷くてずっとここで寝ていた」
「なるほど。復調したからデッキへ行こう……と。それから?」
「けれど、一向に返事が無くてな。そこで、ちょうど通りかかったこのスタッフに鍵を開ける様に頼んだんだ」
シープは首を縦に振って頷く。
「シープさんは、客室のスタッフだから客室用の鍵を持っていた、その鍵でこの部屋を開けたわけですね」
「えぇ、本当は良くないんですけど……」
「けど?」
フランが小首を傾げた。すると、リュクレーヌが顔だけをフランの方へ向け、耳元で囁いた。
「チップだよ。彼はこのお客様から小銭を貰ったんだ」
「あぁ、なるほど」
ところが、小銭によって開けられた部屋の主は亡くなっていたという訳だ。
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