8.スタージェンムーン

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既に四人も死んでいる。 緊急事態という事もあって副船長のポールからは部屋から出ないようにという通達がされた。 勿論、そのお達しは船に居合わせていた名探偵と助手にも届いており、リュクレーヌとフランは部屋に居た。 フランは不安な様子でそわそわとしている。落ち着かないのか、客室内をぐるぐると歩き回ったりしていた。 「リュクレーヌ、流石にここまで殺しが続くなんておかしいよ」 一方、リュクレーヌはテーブルでぼんやりと考え事をしているようだった。 フランの声も届かない。 「リュクレーヌってば!」 「あ、あぁ。悪い。聞いていなかった」 フランはやれやれといった態度で「もう」と言った。 「この事件、何なんだろう。大富豪と船員が一人ずつ殺されているなんて……」 「まぁ、無差別殺人って訳ではないだろうな」 「僕たちが殺されていないもんね」 一番の厄介者であり、事件に足を突っ込むことで狙い易いであろう探偵とその助手。 無差別殺人であればその二人が狙われないわけが無い。 「じゃあ、資産家と船員の確執が原因?」 「さぁな。その辺は船長くらいしか関係していなさそうだけどな」
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