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「人が死んでいるんだよ?どうしてこうも冷静でいられるんだよ」
「……死ぬべき人が死んでいるからだよ」
リュクレーヌはフランから視線を逸らして、小声で言った。
その内容にフランは「はぁ?」と半ば裏返った声を出す。
「じゃあ、何?大富豪の人達も船長もメシスさんも皆、死ぬべきだったって言いたいわけ?」
フランは感情に任せて怒鳴ってしまう。
死んでいい人間なんて居ないはずなのだから、それを平気で死ぬべきなどと言われればそれは感情的になってしまうのも無理がない。
フランの豹変した態度にリュクレーヌは困惑し、両手をおろおろと振った。
「あぁ……違う。言い方が悪かった……」
「僕の言った事とは違うの?」
「そうだよ。死ぬべきっていうのは、そうだな……あらかじめ用意されていた死って意味だよ」
フランはリュクレーヌの言っていた意味は分からなかったが、自分が彼の発言を誤解していた事だけは分かった。
「……ごめん。リュクレーヌの話を聞かせてよ」
「それはだめ」
推理ショーの依頼はきっぱりと断られる。
「けち」
「けちって……仕方がない。ヒントをやる。いいかフラン、俺達は普通の探偵じゃない」
「……うん?」
一つだけ与えられたヒントも如何にも当たり前すぎることで、フランにはピンとこなかった。
「さぁ、もう寝るぞ。明日も忙しくなる」
「えっ!ちょっと待ってよ!リュクレーヌ!」
伝えられることは伝えた。
とリュクレーヌはベッドに潜り込む。
フランが食い下がっても無駄で、彼はもうすでに夢の中へと入っていた。
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