8.スタージェンムーン

35/62
前へ
/743ページ
次へ
◆   だが、無残にも事件は続く。 次の朝、131号室から死体が見つかる。 シープだ。 一見ベッドで眠っているように見えたが右半身は無くなっていた。 あどけない彼のむごたらしい状態に、現場へと駆けつけたリュクレーヌとフラン、そしてスタッフは顔を顰める。 「あぁ!一体誰なんだこんなに酷い事をするのは!もう許せない!」 流石に温和な性格のポールですら、仲間を何人も無残な形で殺されて怒り心頭のご様子だ。 だが、怒っていても何も始まらない。 「落ち着いてください」 「ふざけんな!落ち着いていられるか!」 リュクレーヌは窘めた。 しかし、逆効果で、火に油を注ぐ形になってしまう。 「大体、貴方達は探偵だというのにずっと事件が起きているじゃないか!役立たず!」 「仕方ないでしょ!僕たちは普通の探偵じゃないんだから!」 横暴な物言いにフランは反論した。すると、リュクレーヌはふっと一つ笑みを見せる。 「そう……この子の言う通り、普通の探偵じゃないんですよね。僕たち」 「何?」 「確かめたいことがあります。全ての死体を見せてください」 唐突な提案に、一同がざわつく。 既にみたはずの死体をどうして再び?と問いかけるように。 だが、普通ではない探偵には、何かしら意図があるのだろう。 ポールが恐る恐る口を開いた。 「死体は全て仮設の霊安室に置いています……」 「では、そこへ案内してください。フラン、お前はどうする?」 「僕は……行くよ!いつまでも死体苦手とか言ってはいられないし……」 「とか言って、一人になるのが怖いだけじゃないのか?」 「もう!からかわないでよ!」 図星だった。 実際にフランは一人で行動するのが大層恐ろしく、例え苦手な死体が安置されている場所であっても、リュクレーヌの行くところならば付いて行かざるを得ない状況だった。  
/743ページ

最初のコメントを投稿しよう!

106人が本棚に入れています
本棚に追加