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フランが目を覚ますと、客室の白いベッドに居た。
今まで酷い夢を見た気がする。
死体をリュクレーヌと見に行ったらバラバラにされていて。
だが、今は朝と同じでベッドに居る。
まるで今朝目が覚める前と同じように。
という事はあの酷い光景は──
「……もしかして、夢?」
呟くと「夢じゃねぇよ」という声が、紅茶の湯気と共に漂った。
「お前が倒れたから俺が運んだ。随分魘されていたみたいだけど大丈夫か?」
「う、うん……ごめん」
すぐに現実に引き戻され、フランは俯く。
リュクレーヌが持っていたティーカップは二人分だ。
一つはローテーブルに置き、もう一つはフランに渡した。
温かい朱色の液体が張るティーカップの中を覗きながらフランは「それにしても……」と切り出す。
「せっかく見せてもらった死体があんなに滅茶苦茶じゃあ、この事件はもう……」
「いや、そうとは限らない」
「え?」
「むしろ死体がめちゃくちゃになっていたから確信できたことが一つだけあるんだ」
「どういう事?それは何?」
死体がめちゃくちゃだったから?死体は立派な証拠では無いのか?それを壊されたのならばもっと焦るべきでは無いのか?
リュクレーヌの言っている意味がフランにも流石に分からなくなった。
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