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向かったのは隣の一三三号室だった。
「ごめんくださーい!」
リュクレーヌは重厚なドアをこれでもかというくらい無作法に叩きつける。
「リュクレーヌ、どうしてマグネティカさんの部屋に?」
「ん?まぁ見てろって。すいませーん」
再びドアは叩かれる。
だが、部屋の主であるマグネティカから返事は無い。
「やっぱりあなたが犯人なんですかー?」
「ちょ、ちょっと……」
これでは埒が明かないとリュクレーヌは挑発するような言葉と共にドアを叩き続けた。
すると、ようやく部屋の中からドアの方へと足音が近づき、鍵がカチャリと回る。
「何の用だ」
アルティムは随分と不機嫌な表情でリュクレーヌを見る。
休み中であったはずのところを無作法な物言いで起こされたのだから当然だろう。
「こんにちは。いやぁ、マグネティカさん船酔いが酷いと言っていたので、ほら、酔い止めを持ってきました!」
悪気の無い笑顔でリュクレーヌは黒い粒のようなものを手のひらに載せて見せる。
「悪いが、酔いはもう収まった。これは要らない」
「あぁ、そうでしたか。まぁ、お大事になさってください」
リュクレーヌはアルティムの肩をぽんぽんと二度叩くと、案外あっさりと引き下がり「では、失礼します」と言って部屋を後にした。
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