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再び部屋に戻ると、リュクレーヌは自身の旅行鞄を漁っていた。
派手な色のシャツにくるまれた、長方形の機械を取り出す。
装置の真ん中は正方形の画面のようになっていた。
フランがその画面を覗き込むと、真ん中には豆粒のような点が光っていた。
「それ、何?」
「通信装置だよ。ブラーチに作ってもらったんだ。念のため持って来ていてよかった」
ブラーチお手製の通信装置は、発信器の居場所を受信して、リュクレーヌに教えてくれるものだった。
「いつの間にそんなものを」
「仕込んだのは、マグネティカさんの肩を叩いた時だよ」
「という事は、マグネティカさんが犯人なの?」
「うーん、今は、な」
意味深な物言いをした途端、豆粒のような点滅が赤色に変わり、画面上を泳ぐように移動する。
「おっ、奴さんが動いたみたいだ。俺は奴を追う」
「僕も行くよ」
「いや、だめだ。向こうが通信装置に気づいたらこれが罠の可能性も否めない。そうなったら共倒れの危険だってある」
ぴしゃりと言いきられた。
確かに、ここで二人が行動を共にするリスクはあった。
リュクレーヌは鞄からもう一つ、通信装置を取り出して、フランに手渡す。
「装置の予備がある。これをお前に預けておくよ。この反応が一定時間止まったら合流しよう」
「分かった……」
不安ではあったが、もう犯人は分かっている。
それだけでも心は多少軽い。
それに、マスカの仕業となれば、自分はアマラだ。
戦えばいい。
フランは腹を括って、部屋で留守番をすることにした。
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