8.スタージェンムーン

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部屋から出て、リュクレーヌは通信機とアルティムの位置を把握し、尾行した。 「さて、さて……どこへ向かうのか」 アルティムが曲がり角を左折する。リュクレーヌも後を着けた。 ところが、そこには既にアルティムの姿は無く、着用していたジャケットだけが放り出されていた。 「何っ!?」 反応はここで途切れている。 辺りを見渡すも、アルティムの姿はすでにない。 いや、それどころでは無い。 背後から嫌な気配を感じる。 背中にじわりと汗がにじむ。 おそるおそる振り返ると、そこには、爛れた皮膚の化け物達がリュクレーヌを取り囲んでいた。 「うわあああああっ!!??」 予想もしない突然の状況に、リュクレーヌは意識を手放してしまった。   部屋に一人取り残されたフランはベッドの上、白いシーツにくるまった状態で発信器を見ていた。 実際の時間は分からないが、もうずいぶんと時が経った気がする。 その時、一定の速度で動いていた液晶上の点は、動きを止めてしまった。 「反応が止まった?」 リュクレーヌの言われた通り、部屋から出る。 すると、隣の部屋からも一人の人物が出てきた。 ポールだ。 「あれ?どうしたんですか。緊急時以外は部屋から出ないようにとお伝えしたはずですが」 「あっ、すいません……。リュクレーヌが帰ってこなくて探しに行こうかと思って」 「あぁ、そうでしたか……」 なんとか誤魔化す。 するとポールは考え込むように厳しい表情を見せて黙り込んでいた。 「……アクリウスさん?」 フランが問いかける。が、ポールは返事をしない 「あの……あっ!?」 問いかけも空しく、ポールは、隠し持っていた酒瓶でフランの脳天を殴った。 ──そんな、どうして?犯人はマグネティカさんのはずだったのに 自身の油断を呪いながら、フランも意識を失った。
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