8.スタージェンムーン

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「ひどいよ、僕たちたった300ポンドだって」 フランは抗議した。人二人の命が300ポンドほどで取引されるなんて、と。 それも、貴重な出品だと煽った挙句、この金額であれば、文句の一つも言いたくなる。 尤も、その金はリュクレーヌとフランには一銭も入らないのだが。 リュクレーヌは俯きながらぽつりと呟いた。 「……ポンドなんて誰も言っていないぞ」 「えっ!じゃあ、300シリング?」 リュクレーヌは首を左右に振る。 「ちがう。300人……正確には300体だな」 「どういう事?」 「見てみろ、あの競り落とした男も、他の客も金を持っている気配はない」 「本当だ」 フランは客席の方に目を向ける。 確かに、客たちは、綺麗な身なりをしているわけでもなく、むしろ子汚い格好をしていた。 300ポンドなんて大金があるのであれば、洋服の一着でも新調するだろう。 「ただ、背後に大量の……」 リュクレーヌが指を指しながら言いかけたところでフランは気づく。 彼らの背後に、動かない人形のようなものがある事に。 そして、それは人形なんかではなく── 「死体をお金の代わりにしているって事!?」 「その通り!」 司会者のマスカが嬉々として言う。
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