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「その願いが通じたのか、数年後、船長はマスカに殺されたのです。」
「アンタはファントムに恩があるって訳か」
「えぇ、ファントム様の作り上げたマスカのおかげで私は船長の座に就く事ができましたから」
恨んでいた上司を殺してくれたマスカを、その生みの親であるファントムをマリノスは崇めた。
当時は都市伝説的なものでしかなかったファントムの存在を神のように盲信して、彼は壊れていったのだ。
「しかし、状況は変わりませんでした。船長になったとて、結局は労働者でしかありませんでした。この会社は資産家たちが大量の補助金を投資して成り立っているもので、資産家たちに私たちは逆らう事が出来ませんでした。船の事で揉めていたのは本当です。何も分からない素人が、やれもっと遠くへ行くたいだとか、しまいには北極へのツアーをしたいだとか、言いたい放題にも程がありました」
マリノスが船長になっても、結局彼はこき使われる存在でしかなかった。
船は資産家たちによって牛耳られている。
彼等の要求は横暴そのものだった。
「結局、もしかしたら当時の船長もそういう事情で私たちにつらく当たっていたのかもしれません。それでも私は他のスタッフに当たることなどありませんでしたが」
マスカによって殺された元船長も、資産家へのストレスをマリノス達にぶつけていたのかもしれない。
だが、それが彼らを傷つけても正当化される理由にはならないが。
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