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「そんな時……つい二ヶ月前でした。あの方が現れたのは」
「あの方?」
「まさか……」
「そう、ファントム様です。私を救ってくれた恩人です。私は彼に何かしらの恩返しがしたかった」
悪魔の商人ファントムだった。
彼の存在が危険であることは連日の報道で知らされている事ではあったが、彼を敬愛するマリノスには恐怖の対象ではない。
寧ろ、尊く、愛おしい存在だ。彼に会えて光栄だと言っていた。
「すると、ファントム様は頼みがあると仰った。私は飛び跳ねるほどに喜びました。彼の為ならどんな無理難題でも聞くことが出来ると思いました」
「それで……沈没事故から今回の闇オークションまでの黒幕を任されたという訳か」
「えぇ、その通りです。恨みのある上流階級の人間を殺せた挙句、ファントム様へ恩返しができた!最高の船旅です!」
「……」
フランは黙り込んだ。
彼の心はとっくの昔に壊れている。
そして、その心を壊したのは間違いなく彼を取り巻く環境であったり、上に立つ人間たちであったという。
勿論正しいとは思えない。
だが、この事態を起こしたのは、彼だけの責任なのか?疑問が芽生える。
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