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マリノスの怒りは更に膨れ上がる。
自分の事も敬愛するファントムの事も大切なものを侮辱された彼は、般若のように表情を変え、木槌と蹴りでリュクレーヌをただただ痛めつけた。マリノスの木槌にはべっとりとリュクレーヌの血がにじむ。
「五月蠅い!五月蠅い!殺す!殺してやる!!」
それでもかまわずマリノスは手を止めない。
いや、もはや乖離と関係なく、自我を制御不能なのかもしれない。
滲んだ血は檻の床に垂れるほどになった。
まずい。
いくらリュクレーヌが不死身と言えど、このままでは戦闘不能になってしまう。
「リュクレーヌ!!」
フランは叫ぶ。
なによりも、彼が傷つくところはもう、見たくない!この状況をどうにか止めたいと思った。
でも、どうやって?分からない。全く方法が浮かばない。それでも、それでも。
──頼む。僕は、どうにかして彼を救いたいんだ!
強く願った。
すると、ステージ裏の方から、眩い光が放たれ、轟音と共に、幾何のマスケット銃が出現して、ステージ上を覆いつくす。
「なっ!?」
突然の事に、今度はマスカの方が慌てる。
いや彼だけではない、客席の者たちも一体何が起きているのか状況を呑み込めないでいた。
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