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「あとは、貴方だけです。マリノスさん!」
残されたのは、全てを取り仕切っていた船長、マリノスのマスカだけとなった。
フランが、マスケット銃の銃口を突き付けて言う。
突き付けられたのは、一本だけではない百本ほどの銃口が彼を取り囲んだ。
まるで、先ほどリュクレーヌ達を取り囲んだマスカのように。
「う……う、わたしは、負けるわけに、いかない!」
「……貴方の事、哀れだとおもいますよ」
慈悲を帯びた瞳でフランは言う
「私が?哀れ?何故?」
「貴方は自分の人生を自分で決める事が出来なかった。常に、誰かに支配されて生きてきた」
そう、マリノスは意思を持つことを赦されなかった人間だ。
それ故に壊れてしまった。
「そうなってしまったのは、貴方の置かれた環境も悪かった……だから」
フランは引き金を引いた。
弾丸が、マリノスを貫く。
そして
「うっ!?」
乖離した彼を取り囲んでいたマスケット銃が一斉に放たれた。
もしも、彼の生まれた場所が、就いた職が、全て違ったならば
「今度は間違えないように、自分の意思を持たせてくれる環境に、身を置けますように」
マリノスのように、壊れた操り人形が二度と生まれない世界になれば良い。
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