9.ハーベストムーン

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ところが、その時だった。 ドンドン!とまるで大太鼓を叩いたように、強いノックがドアを鳴らす。 「誰だろう?」 「えらく、乱暴な訪問だな」 これほど強い音を立てて訪れる客など初めてだった。 「どうしよう……泥棒だったら」 フランは一抹の不安を覚え、怯えた。 だが、リュクレーヌはそんなフランに「何を言っているんだ」と鼻を鳴らした。 「そんな訳無いだろ。泥棒が玄関から入ってくるか?」 「あぁ、そっか」 「まぁ、泥棒じゃなくて強盗ならあり得るけどな」 「ダメじゃん!」 白昼堂々、それも玄関から来訪の暴漢であれば泥棒ではなく強盗だろう。 だがフランにとっての問題は細かい言葉の言い回しではないのだ。 それでもリュクレーヌは、ボリュームを増すノックが鳴るドアの方へ向かって行った。 「大丈夫だって。はーい、今出まーす」 「ちょっと!」
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