106人が本棚に入れています
本棚に追加
「ふむ……この方は?」
「私の夫です」
淡々と話を聞いていると、女性の背後に居た人だかり達が騒ぎ出す。
「おい!ズルいぞ!俺の妹も調べてくれ!」
「私の友人も!」
どうやら同様の依頼が大量にあるようだ。
依頼の内容はどれも身内がマスカであるかどうかの調査。
なぜこれほどまでに同じ依頼があるのか、原因は全く心当たりがないが。
「落ち着いて。一人ずつ伺います。えーと貴方は?」
人だかりを一度宥めて、リュクレーヌは先頭に立つ女性に名前を聞く。
「リジュです」
「リジュさん。そうですね、旦那さんをマスカだと疑う理由は?」
「ありません」
「は?」
リジュはきっぱりと言い切る。
リュクレーヌとフランはきょとんとした。
二人の態度にリジュはもう一度毅然とした態度で口を開き直した。
「そんなものは有りません」
「じゃあ、どうして」
「だって、怖いじゃないですか!自分と寝食を共にしている身内が殺戮兵器だなんて……」
「……はぁ」
つまり、リジュは自分の傍に殺戮兵器が居るかもしれないという不安からリュクレーヌに依頼をしたという訳だ。
後ろにずらりと並ぶ依頼人たちも頷きながら彼女の話を聞いていた。
どうやら他の依頼人も同様に安心を得るためにリュクレーヌの元を訪れたのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!