9.ハーベストムーン

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嵐のような来客が去っていき、再び事務所は二人きりになった。 リュクレーヌは神妙な面持ちで俯いていた。 先ほど群衆に投げつけられた言葉を気にしているのか?とフランは恐る恐るリュクレーヌに声をかける。 すると、リュクレーヌは視線をフランの方へゆらりと向けると、「大丈夫」と言うように微笑んだ。 「……俺達は、探偵だよな」 ぽつり、と確かめるように小さく呟く。 不安という感情だけで推理などできない。 一個人の安心の為に、本来生きるべき命を消すのであれば本末転倒だろう。 当てずっぽうでスチームパンク銃を使って、フランを殺人者にする訳にもいかない。 だとすれば、先程の依頼は受けられない。探偵として当然だ。 「うん……そうだね」 フランはリュクレーヌの心中を察していた。 自分を殺人者にする訳にはいかないんだという思いも。 暫く沈黙が続いて、湿っぽい雰囲気になってしまう。 どうも、重たい空気に耐えられないリュクレーヌは、すぐさま顔を上げた。 「それにしても、どうしてここまで大量の依頼人が来たものか……俺たちが船旅に行っている間、何かあったのか?」 「うーん……あ!新聞見たら何か分かるかもよ!」 「おお!確かに!」 リュクレーヌは拳を手のひらに叩いて、船旅中に溜まっていた新聞を取り出した。
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