9.ハーベストムーン

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デスク一面に紙面を広げて、記事を一つ一つチェックする。 中でも一際大きく掲載されていたのは、やはり二人が解決した船旅での事件だった。 「やっぱり、この間の事件は大きく取り上げられているね」 「あぁ……他に、マスカ関係は」 「あ!これ!」 ページが捲られた途端、フランがとある記事に指を指す。 中くらいの記事で、写真などの添付資料はなく、特に目を引くものでは無かった。 だが、見出しはマスカに関わる重大な事が決まった事を伝えていた。 「マスカ……特別法可決……?」 「マスカを取り締まる規制法みたいなものだね」 「なるほどな。国をあげてマスカを撲滅させる流れになっていたわけだ」 マスカのニュースはファントムの存在が公になってからも取り上げられていた。 だが、マスカやファントムに対して政治的な動きはこれまでは特になかった。 元々ただの都市伝説だ。下手に動けば都市伝説を国が信じるのかという批判も集まりかねない。 ただ、大量のマスカが発生して事態が深刻化してきたからこそ、国もようやく重い腰を上げて、法整備をした。 国が動くとなれば、市民もいよいよマスカという存在が他国の兵器から自分自身もなりかねない恐ろしい化け物であるという認識に変わっていったのだろう。 「だから、一般の人たちがマスカのことを詳しく知っていたわけか」 「ところが、逆に不安を煽りすぎた……って感じだな。まぁ怖い事には変わりないけど」 「今までとは大違いだね……」 「都市伝説が、ここまで来るとはな」 フランの流した事実は、今や都市伝説でなく、ロンドンの街を覆いつくす話題となってしまった。 彼らが船旅に行っている間に。
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