9.ハーベストムーン

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◆ 暫くは無いと思っていた依頼が意外な形で転がり込んできた。 依頼というよりも、自ら志願して掴んだ仕事ではあるが。 「そうと決まれば聞き込みだな。行くぞ。フラン」 「あっ、待ってよ」 とはいえ、仕事の時間だ。リュクレーヌとフランは帽子を被ると、事務所のドアを開け、ロンドンの街へと繰り出した 家を出て、あてもなく歩く。二歩、三歩、フランはリュクレーヌの後を追うように小走りになった。 一体どこへ向かうのだろうか。心当たりは有るのだろうか。フランは単刀直入に尋ねた。 「聞き込みって言ってもどこに行くの?」 「そうだな……とりあえずいつも買い物に行く市場とか」 「市場?どうしてそんな所に」 「特に理由は無い。まずは街の人の声ってやつを集めるのさ」 「取材みたい……」 まるで世論調査。探偵ではなくマスコミのような仕事だとフランは感じた。  
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