9.ハーベストムーン

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「すいません、ラルファ刑事は居ますか?」 リュクレーヌは淡々と、その場にいた手の空いていそうな警官に要件を伝える。顔見知りであるラルファ刑事との面会を求めた。 警官が「少々お待ちください」といい一目散に去っていった。暫くすると、見慣れた顔が二人の前に現れた。 「お久しぶりです。ラルファさん」 リュクレーヌはにこりと微笑み手を差し伸べる。ラルファは手を取り握手をした。 「あぁ、随分と久しぶりな気がするな」 「実は少しだけ聞きたいことがありまして」 「手短に頼むぞ。何せ忙しいからな」 普段は強気で快闊なラルファですら、疲弊しているのが見て取れる。心身ともにぐったりとしているようだった。 忙しい。その理由は明らかだ。 「クレーム対応ですか?」 「何故それを?」 「そりゃ、あれだけ叩かれていたら分かりますよ」 日夜、新聞を通じて、警察へ対するヘイトスピーチは警察外部のリュクレーヌですら分かる。 ラルファは大きなため息を吐いた。 「……警察は今や大変な事になっている」 「まぁ、国家権力ですからね。権力があるのに何もできていないじゃないかってところでしょう」 「出来るわけが無いだろう!マスカは、人間には退治することは出来ない」 「えぇ、その通りです。だからアマラ軍が重宝されるようになった」 「毎日アマラ軍と比較されてばかりだ。警察は無能だと後ろ指をさされているよ」 「役割分担の話だと思いますけどね。管轄が違うでしょ。そもそも」
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