9.ハーベストムーン

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悲劇が起きれば嫌われ者を見つけ出して晒上げる記事を書いている彼等にとって、アマラ軍の正体が実は黒幕でしたなどという展開は棚から牡丹餅だった。「今度の晒し物はアマラ軍の番だ」と彼は舌なめずりをしていた。 ──狂ってやがる リュクレーヌは、編集長の胸倉を掴んだ。 「お前っ……!何処まで性根腐っているんだ!」 「どうとでも言ってください。痛くもかゆくもありません。これが私たちの仕事ですから」 開き直る。何を言われても構わない。図太い神経が無ければ民意を動かすことなんてできないのだから。 こんな、人間が居るのか。今まで様々な殺人犯に会ってきたが、誰も殺していないはずの目の前にいるただの新聞屋の男が一番腐った神経をしているとも思えた。 「っ……この!」 気が付いたら、握りしめた拳を振り上げていた。 「リュクレーヌ!手を上げたらダメだ!」 フランの叫び声が聞こえる。ハッとした。ようやくリュクレーヌは正気を取り戻した。 ──そうだ、ここで手を出してしまえば、明日の一面を飾るのは自分になってしまう。 自分だけならまだいい、フランも── リュクレーヌは振り上げた拳をそのまま、ゆっくりと下ろした。
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