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「おい」
「まだ何か?」
編集長は鬱陶しそうに振り返る。早く記事を書きたいのだろう。
「他人を晒し物にして食べる飯は美味いか?」
リュクレーヌは編集長を睨みつけながら訊いた。すると、彼は「おかしな事を訊くんですねぇ」と鼻で嗤う。
「えぇ、最高ですよ。他人の不幸は自分の幸福。人間なら本心は誰だってそうでしょう?自分を持ち上げるのは大変だから、他人を蹴落とす。そんなもんですよ、人間なんて。」
「残念ながら俺はもう人間じゃないから分からないし、そもそも、分かりたくないね」
皮肉には皮肉で返す。口ならばこちらも達者だ。
お前のような汚い人間でいるのであれば、人間でなくていい。とでも言うように。
そんなリュクレーヌの皮肉と嫌味の混じった言葉にも編集長は笑顔を見せていた。
「あぁ、そうでしたか。でも、貴方だって私にアマラ軍の失態を見せつけて一泡吹かせるつもりだったんでしょう」
「っ……!」
更に皮肉を返された。
リュクレーヌもまた、編集長をぎゃふんと言わせるために崇拝しているアマラ軍のスキャンダルを横流しした。
自らの言った人間の嫌な部分を晒してしまったのだ。
「残念でしたね!むしろ私は喜んでいます。明日からはアマラ軍が標的ですね。楽しみです!それでは」
何も言い返せなかった。
リュクレーヌは悔しさと、情けなさとで、無言で俯く。
「リュクレーヌ……」
フランが恐る恐る声をかけた。
「……帰るぞ」
「う、うん……」
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