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最後の最後まで不愉快な思いをした。フランも、かける声が浮かばず、地面を見ながら帰り道を歩いていた。
何も、言い返せなかった。自分の人間臭い部分を指摘されて、それはあの編集長と同じ事をしているじゃないかと。
醜く、愚かで、汚い──それが、自分達の本質であり、それが──
「それが、人間、か……」
「え?」
「あ、いや何でもない」
「嘘、誤魔化さないでよ」
つい、口に出てしまった言葉をなかった事にはできなかった。
ずっと俯いていたフランの瞳がリュクレーヌを捕らえる。
「あのさ、リュクレーヌ……もしかして気にしている?」
「別に、あんな奴の言う事なんか気にしてねぇよ」
「そうじゃなくて……」
「?」
リュクレーヌには心当たりがなかった。今回の事でなければいったい何の事だろう。
「前、僕、リュクレーヌに人間らしいって言ったじゃん」
「あぁ、よく覚えているよ」
「それなのに、今回みたいに、人間の本質を否定されるような事になってさ……気にしてないかなって」
人間を否定され、人間らしいという言葉がナイフになっていないか。フランには気がかりだった。
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