9.ハーベストムーン

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◆   最後の最後まで不愉快な思いをした。フランも、かける声が浮かばず、地面を見ながら帰り道を歩いていた。 何も、言い返せなかった。自分の人間臭い部分を指摘されて、それはあの編集長と同じ事をしているじゃないかと。 醜く、愚かで、汚い──それが、自分達の本質であり、それが── 「それが、人間、か……」 「え?」 「あ、いや何でもない」 「嘘、誤魔化さないでよ」 つい、口に出てしまった言葉をなかった事にはできなかった。 ずっと俯いていたフランの瞳がリュクレーヌを捕らえる。 「あのさ、リュクレーヌ……もしかして気にしている?」 「別に、あんな奴の言う事なんか気にしてねぇよ」 「そうじゃなくて……」 「?」 リュクレーヌには心当たりがなかった。今回の事でなければいったい何の事だろう。 「前、僕、リュクレーヌに人間らしいって言ったじゃん」 「あぁ、よく覚えているよ」 「それなのに、今回みたいに、人間の本質を否定されるような事になってさ……気にしてないかなって」 人間を否定され、人間らしいという言葉がナイフになっていないか。フランには気がかりだった。
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