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「はぁ?俺がそんな事気にしているとでも」
「本当に?」
「っ……」
「本当に、全く気にしていない?」
「……確かに、俺自身、躍起になっていたよ。アイツに目にもの見せてやる、って思っていた。それは事実だ。私怨で動いていた部分もあった」
あの編集長が憎かった。狂った人間の内部を見て、無意識下のうちに殴ってやろうとも思った。
やってはいけない事だ。あってはいけない事だ。
でも、それでも──
「けど、お前が居てくれた」
「僕?」
「あぁ。俺、一人じゃなくてよかった。俺が殴りそうになった時、止めてくれただろ。」
「うん」
「あの時、お前の声が聞こえたから我に帰れたんだよ。このままアイツを殴ったらお前にも迷惑をかける事になるって……」
「そんなふうに……思ってたんだ」
あの時フランが止めてなければ、リュクレーヌは拳で編集長を殴りつけていただろう。
「あぁ、一人だったら間違えていた。ルーナエ……みたいにな。そもそも俺は、弟がやってしまった事を正すために、アイツの間違いを少しでも何とかするためにマスカになったんだよ」
双子の弟は道を間違えて悪魔に躰を奪われた。そして、悪魔は弟の躰で人を兵器へと変えている。
あってはならない間違いを、傍に居ながら止められなかった──むしろ原因を作ってしまった兄は、なんとしてでも軌道修正しようとしていた。
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