106人が本棚に入れています
本棚に追加
「呼ばれたから来たが、怪我人という事か?」
ブラーチがまず目についたのは、ガーゼを額に当てたクレアの姿だった。
医者という事もあり、手当の依頼かと思っても無理はない。
「それもあるんだけどな」
「大丈夫よ、ブラーチさん。リュクレーヌが手当てしてくれたから」
「ならいいが……」
まだ心配そうに、クレアを見つめながら、伏し目がちになる。
今回、ブラーチが呼ばれたのは医者としての依頼ではない。魔術師として、聞きたいことがある。
リュクレーヌは本題に入ることにした。新聞をローテーブルに置いてゴーレムに関する記事を指さし、ブラーチに見せる。
「早速だけど、この記事にあるゴーレムの正体、お前分かる?」
「あぁ、電話で言っていた件だな。ちょうどペストマスクの人形がうろついていたから、魔術を解析したんだが」
ゴーレムは街に居た。
リュクレーヌに事前に聞いていた特徴から、彼らが件の第三勢力という事かと、ブラーチは術を使い、彼らに魔術がかかっているかを解析した。
結果として、魔術は検出された。つまり、ゴーレムは人間でもなく、ただの人形でもないという事だ。
「おおっ!それはちょうどよかったな」
「だが……あまりいい結果ではないぞ」
「いい結果じゃない?どういうことですか?」
フランが聞き返す。都合の悪い結果なのだろうか。
ブラーチは一つ呼吸を置いて、結果を報告する。
「ゴーレムは、マスカだ」
ゴーレム、イコール、マスカ。ブラーチの提示した結果に誰もが怪訝な表情を浮かべた。
最初のコメントを投稿しよう!