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経験論だろうか。とフランは思いながら、確かに自分もアマラ軍の訓練所時代、座学の授業では後ろの席に座っていたものだと思い出した。
「ほら、早速声をかけるぞ。すいませーん」
これだけ多くの信者が居れば下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる。一人くらい捕まるだろうと思っていた。
ところが、誰一人として、戒律に関する文句を言う者は無かった。
そこまで信仰深そうではない信者を選んでいるつもりではあったが──
「いないもんだね」
「皆、信仰深いもんだ。こんな胡散臭い宗教よく信じられるな」
二人はひとまず諦めて帰ろうとした。事務所でもう一回作戦を練りなおそうと考えていた。
教会から少し離れた建物の隅で座り込む人が居た。
近づくとすすり泣く声が聞こえる。
「ん、誰かが泣いている?」
リュクレーヌとフランは泣き声の方へと近づいた。
「どうしたんですか?」
「あぁ、プルーを……を返して! !テレーノ教なんて……滅んでしまえばいいのよ!」
「落ち着いてください。僕らはテレーノ教の信者ではありません」
泣きじゃくり、テレーノ教への恨みを口にした女性に声をかける。とりあえず落ち着いてもらうために、自分達は信者ではない事を伝えた。
「一体何があったんですか?」
フランが訊く。
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