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「ところが、ここでおかしい事がある。消息不明なんだよ」
「もしかしてまだ生きているって事?」
プルーが生きていて黒幕というオチでも待っているのではないかとフランは勘繰る。だがリュクレーヌ首を左右に振った。
「いや。それは分からない。ただ、戒律違反で殺されたのだとしたら、見せしめにした方が信者の信仰を強くする効果があるだろう。強制力を増すと言うか……」
「うぅん……過激な宗教だと思われたくないから、とかかな」
「俺の考えはこうだ。"彼は、殺されなければならなくなった"のではないかと」
「それ……どういうこと?」
「例えば……見てはいけないものを見てしまった、とかな」
「!」
リュクレーヌが仮説を立てた瞬間、礼拝堂にコツンと固い音が響いた。
「っ……誰か来る!」
足音だ。不規則なテンポで刻まれる足音は二人分であることを示す。
「見てはいけないもののお出ましかもな」
リュクレーヌは待っていましたと言うように。物陰から足音の主の方を伺う。
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